ワクチンとは

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ワクチンとは

ワクチンとは?

 

ワクチンは、病気にかかる前に行う「予行演習」です

私たちの体には、ウイルスや細菌などの病原体から体を守る「免疫」という仕組みがあります。
しかし、初めて出会う病原体に対しては、その特徴を見分け、攻撃するための抗体をつくるまでに時間がかかります。その間に病原体が増えてしまうと、重症化したり、命にかかわったりすることがあります。
ワクチンは、病原体そのものを弱くしたものや、感染力をなくしたもの、病原体の一部分などを利用して、あらかじめ免疫に病原体の特徴を覚えさせるものです。
言い換えると、ワクチンは、病気にかかる前に行う「予行演習」です。
あらかじめ訓練を受けた免疫は、本物の病原体が侵入したときに、より早く反応できるようになります。その結果、感染そのものを防いだり、感染しても発症や重症化を防いだりすることができます。
 
 

免疫は、私たちの体を守る「防衛隊」

免疫の働きを「地球防衛軍」に例えてみましょう。
初めて見る敵が突然現れた場合、防衛隊は次のような準備を一から始めなければなりません。
 

    1. 敵が侵入したことに気づく
    2. 敵の特徴や弱点を調べる
    3. 敵を攻撃する抗体や免疫細胞をつくる
    4. 敵を排除する

 
この準備には、数日から一定の時間がかかります。
ワクチンを接種すると、病原体の特徴を示す「手配書」のような情報が、あらかじめ免疫に伝えられます。免疫はその情報をもとに抗体をつくり、病原体の特徴を記憶します。
そして本物の病原体が侵入したときには、すでに訓練を終えた免疫が、すばやく反応できるようになります。
ワクチンは、体の中に新しい防衛力を外から持ち込むものではありません。
私たち自身がもともと持っている免疫の力を、あらかじめ準備させるものです。
 
 

ワクチンを接種すれば、絶対に感染しない?

ワクチンの効果は、ワクチンの種類、接種を受ける人の年齢や体調、接種からの期間、流行している病原体の型などによって異なります。そのため、接種しても感染することはあります。
しかし、感染を完全に防げない場合でも、発症を防ぐ、重症化を防ぐ、入院や死亡の危険を減らすという大切な効果があります。
ワクチンの目的は、「絶対に感染しない体をつくること」だけではなく、感染症によって命や健康が失われる危険をできるだけ小さくすることです。
 
 

ワクチンには、いろいろな種類があります

 
大きく分けると、【生ワクチン】と【非生ワクチン】に分かれます。
【生ワクチン】

    • 注射生ワクチン
    • 経口生ワクチン
    • 点鼻生ワクチン

【非生ワクチン】

    • 不活化ワクチン
    • トキソイド
    • 組換え、サブユニット、結合型ワクチン
    • mRNAなど

 
接種間隔を説明する際には、非生ワクチンが不活化ワクチンとして説明されることが多くなります。
 
・生ワクチン

    • 病原体の病原性を弱めてつくられたワクチンです。実際の感染に近い免疫反応が起こるため、比較的少ない接種回数で、強く長く続く免疫が期待できます。
    • 麻しん、風しん、水痘、おたふくかぜなどのワクチンが代表的です。
    • 一方で、免疫機能が大きく低下している方や妊娠中の方などは、接種できない場合があります。

 
・不活化ワクチン

    • 感染する能力をなくした病原体や、その一部分を利用したワクチンです。ワクチンによってその感染症を発症することはありませんが、十分な免疫をつくり、維持するために、複数回の接種や追加接種が必要になることがあります。
    • 不活化ポリオ、日本脳炎、A型肝炎、狂犬病、注射で接種するインフルエンザワクチンなどがあります。

 
・トキソイド

    • 細菌がつくる「毒素」を無毒化してつくられたワクチンです。細菌そのものではなく、毒素によって起こる病気を防ぎます。
    • 破傷風やジフテリアのワクチンが代表的です。

 
・組換え・サブユニット・結合型ワクチン

    • 病原体のうち、免疫をつくるために必要な一部分だけを利用するワクチンです。
    • B型肝炎、HPV、帯状疱疹、肺炎球菌、Hib、髄膜炎菌など、多くのワクチンにこの技術が使われています。

 
mRNAワクチンなど

    • 病原体の一部分を体内で一時的につくるための「設計図」を届け、免疫にその特徴を覚えさせる方法です。mRNAは体内に長く残らず、人の遺伝子を変化させるものでもありません。

 
 

なぜ何回も接種するワクチンがあるの?

免疫は、一度の接種だけでは十分につくられないことがあります。また、いったんできた免疫も、時間の経過とともに弱くなる場合があります。
そのため、一部のワクチンでは、決められた間隔で複数回接種する「初回免疫」と、その後に免疫の記憶を呼び戻す「追加接種」が必要です。
必要な回数や間隔はワクチンによって異なり、すべてのワクチンを一律に10年ごとに接種するわけではありません。
 
 

アジュバントとは?

一部のワクチンには、少ない抗原でも十分な免疫反応を引き出すために、「アジュバント」と呼ばれる成分が加えられています。アジュバントは、いわば免疫の訓練を助ける「応援役」です。
その働きによって、接種した場所の痛み、赤み、腫れなどが現れることがあります。多くは数日以内に自然に軽くなります。
なお、すべての不活化ワクチンにアジュバントが含まれているわけではありません。
 
 

接種後に熱や腫れが出たら、免疫がついた証拠?

ワクチン接種後には、接種部位の痛みや腫れ、発熱、だるさなどが起こることがあります。これは、免疫反応に伴って生じることのある反応です。
ただし、症状が出たから必ず強い免疫がついた、症状が出なかったから効果がなかった、ということではありません。何も症状がなくても、免疫はきちんとつくられます。
また、接種後に起きた出来事が、すべてワクチンによるものとは限りません。
例えば、ワクチン接種の翌日に交通事故に遭ったとしても、接種との因果関係はありません。同じように、病気や体調不良が接種後に偶然重なることもあります。
ワクチンの安全性を評価するときには、

    • その症状が接種していない人にも通常どのくらい起きるのか
    • 接種した人で発生頻度が増えているか
    • 接種から発症までの時間に医学的な整合性があるか
    • 同じ症状が繰り返し報告されているか

などを、多くの人のデータを用いて慎重に検討します。WHOも、接種後に起きた健康上の出来事と、ワクチンが原因で起きた副反応を区別して評価することの重要性を示しています。
 
 

ワクチンの歴史

感染症を予防しようとする試みには長い歴史があります。少なくとも15世紀ごろには、天然痘にかかった人の膿などを利用する「人痘法」が、中国やインドなどで行われていました。しかし、これは天然痘を発症し、命を落とす危険もある方法でした。
1796年、イギリスの医師エドワード・ジェンナーは、牛痘にかかった人が天然痘にかかりにくいことに注目し、牛痘を利用した予防法を実証しました。これが、世界で最初の近代的なワクチンとされています。
その後、パスツールらによる研究を経て、狂犬病をはじめ、さまざまな感染症に対するワクチンが開発されました。
 
 

人類がワクチンで根絶した天然痘

天然痘は、高熱と全身の発疹を起こし、死亡したり、失明や重い瘢痕を残したりする恐ろしい感染症でした。
 
日本でも735~737年に天然痘と考えられる疫病が全国的に大流行し、当時の人口の約25~35%、およそ100万~150万人が死亡したと推計されています。天然痘の流行に加え、飢饉、地震、政争や反乱などが相次ぐなか、聖武天皇は国家の安泰と人々の幸福を願い、国分寺の建立を命じ、東大寺の大仏造立を発願しました。
 
各国でワクチン接種と患者の監視が続けられ、自然感染による最後の患者は1977年に確認されました。そして1980年、WHOは天然痘の世界根絶を宣言しました。
天然痘は、これまでに人類が世界から根絶することに成功した唯一の人の感染症です。
 
 

ワクチンは、どれだけの命を救ってきたのでしょうか

WHOなどが2024年に発表した研究では、1974年からの50年間に、14種類の感染症に対するワクチンによって、世界で少なくとも1億5,400万人の命が救われたと推計されています。
これは、50年間、毎分6人の命が救われ続けた計算になります。
救われた命のうち約1億100万人は乳児で、世界の乳児死亡率改善の約40%にワクチンが貢献したと推計されています。特に麻しんワクチンは、救われた命全体の約60%を占めています。
日本でも、かつて多くの子どもたちの命を奪ったポリオ、ジフテリア、麻しん、日本脳炎、Hib感染症などは、ワクチンの普及によって大きく減少しました。
患者さんをほとんど見かけなくなったため、その病気の怖さを実感しにくくなっています。しかし、病原体そのものが世界からなくなったわけではありません。ワクチンによって病気が抑えられているからこそ、「見えなくなっている」のです。
 
 

ワクチンは、自分だけでなく周囲の人も守ります

ワクチンを接種できない赤ちゃん、免疫機能が低下している方、治療のため生ワクチンを接種できない方もいます。
多くの人が免疫を持つことで感染症が広がりにくくなれば、こうした方々を間接的に守ることにもつながります。
予防接種は、自分自身のためだけではなく、家族や身近な人、そして社会全体を守る方法でもあります。
 
 

正しい情報をもとに、一緒に考えるために

ワクチンには大きな効果がありますが、副反応がまったくない医薬品ではありません。そのため、接種するかどうかを考える際には、ワクチンの効果と副反応だけでなく、接種しなかった場合に感染症にかかる危険も含めて比較することが大切です。
年齢、持病、妊娠、生活環境、職業、渡航先などによって、必要なワクチンは異なります。
インターネット上の情報だけで判断せず、不安なことや分からないことがあるときは、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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