ワクチンは子どもだけのものではなく、大人だからこそ必要なものがあります
当院で接種可能なワクチン一覧、及び価格表はこちらから
ワクチン一覧表.pdf
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン
| ワクチン:シルガード9 |
|---|
| 接種回数:15歳以上は3回接種、9歳以上14歳以下は2回、もしくは3回 |
| 接種スケジュール:3回接種の場合、初回接種から2ヶ月後(最短で1ヶ月)で2回目、2回目から4ヶ月(最短で3ヶ月)で3回目、3回目は1回目から1年以内に接種することが望ましいです。 2回接種の場合は初回接種から6ヶ月後に2回目の接種となります。 |
| 接種費用:1回28,600円(税込) |
HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、多くの人が一生のうちに一度は感染するとされています。感染しても多くの場合は自然に排除されますが、一部の感染は長期間体内に残り、がんや尖圭コンジローマの原因となります。
HPVが原因となる主な病気
がん
HPVは女性の子宮頸がんだけでなく、男女共通で次のようながんの原因となります。
- 子宮頸がん
- 中咽頭がん(のどの奥のがん)
- 肛門がん
- 外陰がん
- 腟がん
- 陰茎がん
近年、欧米では子宮頸がんよりも男性の中咽頭がんの患者数が多くなっている国もあります。
17歳までにHPVワクチンを接種した女性では、子宮頸がんの発症が90%以上減少したことが報告されており、HPVワクチンは「がんを予防できるワクチン」として世界的に高く評価されています。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、90%以上がHPV6型・11型の感染によって発症する性感染症です。
-
主な症状
- 陰部や肛門周囲にイボができる
- 徐々に数が増えることがある
- 痛みは少ないが見た目の問題が大きい
- 治療後も再発を繰り返すことがある
-
治療
- 塗り薬
- 凍結療法
- レーザー治療
- 外科的切除
- 生命に関わる病気ではありませんが、精神的な負担が大きく、治療が長期間に及ぶこともあります。
- 女性では若年成人以降に発症が減少する傾向がありますが、男性では50~60代になっても発症率が大きく低下しないことが知られています。そのため、将来的に新たなパートナーとの性交渉の可能性がある方には、年齢にかかわらず接種を検討する価値があります。
男性も接種する時代へ
以前は「女性のためのワクチン」というイメージが強くありましたが、現在では多くの国で男女ともに定期接種が行われています。
日本でも男性への接種費用助成を行う自治体が増えており、HPVワクチンは
- 自分自身のがん予防
- 尖圭コンジローマ予防
- パートナーへの感染予防
という3つの大きなメリットがあります。
このような方に接種をおすすめします
- HPVワクチンを接種していない成人女性
- HPVワクチンを接種していない成人男性
- 将来的に新たなパートナーとの性交渉の可能性がある方
- 尖圭コンジローマを予防したい方
- 子宮頸がんや中咽頭がんなどのHPV関連がんを予防したい方
破傷風トキソイド
| ワクチン:破傷風トキソイド |
|---|
| 接種回数:1968年以前に生まれた方や、今まで一度も接種をしたことがない場合は3回接種、1968年以降に生まれた方で定期接種の予防接種を受けていても10年以内に接種がない場合は1回接種 |
| 接種スケジュール:3回接種の場合は初回接種後3〜8週間で2回目、2回目から半年以上あけて3回目の接種、その後は10年毎に追加接種できると安心です。 |
| 接種費用:1回5,500円(税込) |
| ※怪我をした際の治療で接種する場合は保険適用となります。(屋外で怪我をしたり、動物に噛まれた時などで破傷風の感染リスクが高い時は、5年以内に破傷風トキソイドの接種がなければできるだけ早期に曝露後予防として接種を受けて下さい) |
破傷風とは
破傷風は、土や砂、ほこりの中に存在する「破傷風菌(Clostridium tetani)」が傷口から体内に入り、神経に作用する毒素を作ることで発症する重い感染症です。
人から人へ感染することはありません。発症すると集中治療室(ICU)での治療が必要になることもあり、現在でも命に関わる病気です。
どのような時に感染するの?
破傷風菌は土壌や動物の糞便が混じる環境に広く存在しています。
感染の原因となる傷の例
- 釘を踏んだ
- 庭仕事や農作業中のけが
- 転倒による擦り傷
- 犬や猫など動物による咬傷
- 木片や金属片が刺さった傷
- 災害時の外傷
特に深い傷や汚れた傷でリスクが高くなりますが、軽い擦り傷や本人が気付かないほどの小さな傷から発症することもあります。患者の約3割では明らかな受傷歴が確認できないこともあります。
潜伏期間
感染してから症状が出るまでの期間は
通常3~21日(平均約8日)
です。
多くは2週間以内に発症します。
一般に潜伏期間が短いほど重症化しやすく、死亡率も高くなることが知られています。
どんな症状が出るの?
最初は
- 口が開きにくい
- あごがつっぱる
- 首や肩がこる
- 飲み込みにくい
などの症状から始まります。
その後、
- 全身の筋肉が硬くなる
- 強い筋肉のけいれん
- 背中が弓なりに反る
- 呼吸が苦しくなる
- 血圧や脈拍が大きく変動する
などの症状が現れます。
大きな音や光、体に触れられる刺激だけで全身のけいれんが誘発されることもあります。
治療法
治療には
- 傷の洗浄・処置
- 破傷風免疫グロブリン(TIG)
- 抗菌薬
- 筋弛緩薬や鎮静薬
- 人工呼吸管理
などが必要になります。
発症すると数週間から数か月に及ぶ入院治療が必要になることもあります。
致死率は?
ワクチンや集中治療が発達した現在でも、
破傷風患者のおよそ10人に1人が死亡するとされています。
特に
- 高齢者
- ワクチン未接種者
- 潜伏期間が短い重症例
では死亡率が高くなります。
予防するには?
破傷風は発症すると重症化しやすい一方、
ワクチンで予防できる病気です。
日本では小児期の定期接種で破傷風ワクチンを接種していますが、免疫は徐々に低下します。
そのため成人では
10年ごとの追加接種(ブースター接種)
が推奨されています。
また、海外では百日咳予防も兼ねた
Tdap(破傷風・ジフテリア・百日咳混合ワクチン)
の接種が広く行われています。
高齢者肺炎球菌ワクチン
当院での接種
【定期接種】
- プレベナー20(PCV20) 1回
【任意接種】
- プレベナー20(PCV20) 12,100円/回
- キャップバックス(PCV21) 14,300円/回
※接種歴や基礎疾患によって推奨される接種方法が異なります。ご不明な方はお気軽にご相談ください。
高齢者の肺炎球菌感染症
肺炎球菌は、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの原因となる細菌です。特に高齢者では、肺炎だけでなく菌が血液中に入り込む敗血症や髄膜炎などの重い感染症を引き起こすことがあり、入院や命に関わることもあります。
高齢になるほど重症化のリスクが高くなるため、肺炎球菌ワクチンによる予防が推奨されています。
このような方におすすめです
- 65歳以上の方
- 心臓病、慢性肺疾患、腎疾患のある方
- 糖尿病のある方
- 免疫力が低下する病気や治療を受けている方
- 肺炎を予防したい高齢者の方
定期接種について
2026年4月から、高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種は
「プレベナー20(PCV20)」
へ変更されました。
対象者
- 65歳の方
- 60~64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の重い障害や、HIVによる免疫機能障害のある方
接種回数
1回接種
プレベナー20は20種類の肺炎球菌に対応した結合型ワクチンで、長期間の免疫と高い予防効果が期待されています。
これまで肺炎球菌ワクチンを接種した方へ
これまで定期接種で使用されていた
ニューモバックスNP(23価肺炎球菌ワクチン:PPSV23)
は、接種後5年以上経過すると抗体価が低下してくるため、再接種が推奨されています。
また、過去にニューモバックスを接種した方でも、
接種から1年以上経過していればプレベナー20を追加接種することが可能です。
プレベナー20は小児用肺炎球菌ワクチンとして生後2ヶ月から接種を行っているワクチンを高齢者も定期接種として接種が可能ですが、キャップバックス(21価)はプレベナー20と比べると1価多いだけですが、含まれている型はプレベナー20とキャップバックスは10種類が同じですが、他の11種類の型は新たに採用された型のため、高齢者の重症化しやすい肺炎球菌感染症の約75%をカバーしています。(プレベナー20は約55%をカバー)
定期接種としての接種はプレベナー20となりますが、自費での任意接種でも良い場合はキャップバックスの接種ができると良いです。
帯状疱疹ワクチン
現在、日本では2種類の帯状疱疹ワクチンを接種できます。
生ワクチン(水痘ワクチン)
- 接種回数:1回
- 比較的安価
- 予防効果は徐々に低下する
- 免疫が低下している方には接種できない場合がある
- 接種費用:7,700円(定期接種の場合は4,500円)
- ※生活保護受給者の方、世帯全員が住民税非課税の場合は接種料金が免除となります。 詳しくは札幌市ホームページにてご確認ください。
シングリックス(不活化ワクチン)
- 接種回数:2回
- 50歳以上で接種可能(発症リスクが高い場合は18歳から接種可能)
- 高い予防効果が期待できる
- 10年以上効果が持続することが報告されている
- 帯状疱疹後神経痛の予防効果も高い
- 接種費用:22,000円(定期接種の場合は10,800円)
- ※生活保護受給者の方、世帯全員が住民税非課税の場合は接種料金が免除となります。 詳しくは札幌市ホームページにてご確認ください。
※接種後に腕の痛みや発熱などの副反応が出ることがありますが、多くは数日以内に改善します。
シングリックスの接種間隔
50歳以上は初回接種後2ヶ月で2回目接種
18歳以上で感染リスクが高い場合は初回接種から1ヶ月以上あけて2回目接種
65歳以上の方は定期接種の対象です
令和7年(2025年)4月から、帯状疱疹ワクチンは高齢者の定期接種となりました。
対象年齢や自己負担額は自治体によって異なりますので、詳しくはお問い合わせください。
札幌市の令和8年4月1日から令和9年3月31日までの定期接種は
- 【65才】昭和36年4月2日〜昭和37年4月1日生の方
- 【70才】昭和31年4月2日〜昭和32年4月1日生の方
- 【75才】昭和26年4月2日〜昭和27年4月1日生の方
- 【80才】昭和21年4月2日〜昭和22年4月1日生の方
- 【85才】昭和16年4月2日〜昭和17年4月1日生の方
- 【90才】昭和11年4月2日〜昭和12年4月1日生の方
- 【95才】昭和6年4月2日〜昭和7年4月1日生の方
- 【100才】大正15年4月2日〜大正16年4月1日生の方
※札幌市在住の方
以上の方が定期接種の対象となります。
帯状疱疹とは?
子どもの頃にかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスは、治った後も体の神経の中に潜んでいます。
加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると、再びウイルスが活動し始め、体の左右どちらか一方に赤い発疹や水ぶくれ、強い痛みを起こします。これが帯状疱疹です。
80歳までに約3人に1人が発症するといわれており、決して珍しい病気ではありません。
帯状疱疹で本当に大変なのは「後遺症の痛み」です
帯状疱疹の発疹は通常2~4週間ほどで治りますが、問題はその後です。
発疹が治った後も神経の傷が残り、
- ピリピリする
- 焼けるように痛い
- 服が触れるだけで痛い
- 夜も眠れない
といった痛みが何か月も、時には何年も続くことがあります。
これを**帯状疱疹後神経痛(PHN:Post Herpetic Neuralgia)**といいます。
高齢になるほど発症しやすく、帯状疱疹になった方の約20~30%が経験するとされています。
「発疹は治ったのに痛みだけが残る」
「日常生活や睡眠に支障が出る」
という非常につらい後遺症であり、治療に難渋することも少なくありません。
そのため、帯状疱疹は発症してから治療するよりも、発症そのものを予防することが重要な病気です。
RSウイルスワクチン
RSウイルスは、発熱、せき、鼻水などを起こす呼吸器感染症です。
乳幼児に多い病気として知られていますが、実は高齢者でも重症化することがある感染症です。
ほとんどの人は2歳までに一度は感染しますが、その後も何度でも感染するため、年齢を問わず注意が必要です。
現在、当院では以下のRSウイルスワクチンが接種できます。
アレックスビー®(Arexvy)
- 60歳以上が対象
- 1回接種
- RSウイルスによる下気道感染症を予防
- 18歳以上で次のような基礎疾患がある方
-
呼吸器疾患【COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息、間質性肺炎、その他の慢性肺疾患】
心血管疾患【慢性心不全、虚血性心疾患、その他の慢性心血管疾患】
腎・肝疾患【慢性腎臓病(CKD)、慢性肝疾患】
代謝疾患【糖尿病】
神経疾患・神経筋疾患【脳血管障害後遺症、パーキンソン病、筋ジストロフィー、神経筋疾患全般】
肥満【BMI 30以上を目安とする肥満】
免疫不全状態【がん化学療法中、臓器移植後、免疫抑制剤使用中、免疫不全症、その他、免疫機能低下が疑われる状態】
- 接種費用:1回28,600円(税込)
アブリスボ®(Abrysvo)
- 60歳以上が対象
- 1回接種
- RSウイルスによる下気道感染症を予防
- 妊婦さんへの接種にも使用されるワクチン
- 接種費用:1回34,100円(税込)
高齢者のRSウイルス感染症
高齢者がRSウイルスに感染すると、
- 気管支炎
- 肺炎
- 呼吸不全
などを起こし、入院が必要になることがあります。
特に次のような方は重症化しやすいことが知られています。
- 65歳以上の方
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある方
- 喘息のある方
- 慢性心不全など心臓病のある方
- 糖尿病のある方
- 免疫力が低下している方
- 高齢者施設に入所している方
インフルエンザや肺炎球菌と同様に、高齢者の健康を脅かす重要な呼吸器感染症の一つです。
接種によってRSウイルス感染症による重症化や入院のリスクを減らすことが期待されています。
赤ちゃんを守るRSウイルスワクチン
RSウイルスは、乳児にとって最も注意が必要な感染症の一つです。
生後6か月未満、特に生後1~2か月頃の赤ちゃんが感染すると、
- 細気管支炎
- 肺炎
- 呼吸困難
を起こし、入院が必要になることがあります。
毎年多くの乳児がRSウイルス感染症で入院しており、重症化すると集中治療が必要になる場合もあります。
妊娠中のワクチン接種で赤ちゃんを守ります
妊娠中のお母さんがRSウイルスワクチンを接種すると、作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんへ移行します。
そのため、生まれたばかりの赤ちゃんがRSウイルスに感染した場合でも、重症化を防ぐ効果が期待できます。
これは、赤ちゃん自身にワクチンを接種するのではなく、
「お母さんが接種して、生まれてくる赤ちゃんを守るワクチン」
です。
妊婦さんの定期接種
2026年4月から、妊婦さんに対するRSウイルスワクチン接種が定期接種となりました。
接種できる医療機関は産婦人科となります。(当院では接種はできません)
対象
- 妊娠28週~36週の妊婦さん
接種回数
- 1回
推奨時期
- 妊娠28~36週での接種
- 特に妊娠32~36週頃での接種が推奨されています
風しん(風疹)ワクチン
特例措置以外の場合の接種費用
- 麻しん風しん混合ワクチン:1回11,000円(税込)
風しんは大人もかかる感染症です
風しんは、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどを起こすウイルス感染症です。
子どもの病気と思われがちですが、大人が感染すると高熱や関節痛が強く、重症化することもあります。また、症状が軽かったり、発疹や発熱がはっきりしなくても周囲に感染させることがあります。
妊娠中の感染に注意
妊娠初期の女性が風しんに感染すると、おなかの赤ちゃんに重大な影響を及ぼすことがあります。
先天性風しん症候群(CRS)とは
妊娠初期の風しん感染によって生じる病気で、
- 難聴
- 白内障
- 先天性心疾患
などの障害を引き起こすことがあります。
そのため、妊娠を希望する女性だけでなく、パートナーや同居家族も十分な免疫を持っていることが大切です。
妊娠を希望する方へ
風しんにかかったことがなく、ワクチン接種歴が不明な方は、妊娠前に免疫の確認をおすすめします。
特に、
- 妊娠を希望している女性
- 妊婦のパートナー
- 妊婦と同居する家族
は、必要に応じて風しんワクチンまたはMR(麻しん風しん混合)ワクチンを接種しましょう。
一般的には、風しんに対する十分な免疫を得るために 2回のワクチン接種 が推奨されています。
※妊娠中は風しんワクチンを接種できません。妊娠を希望する場合は妊娠前に接種を済ませましょう。
日本はWHOから「風しん排除国」に認定されました
日本は2025年9月に、世界保健機関(WHO)から「風しん排除国」に認定されました。
しかし、海外では現在も風しんが流行している地域があり、海外からの持ち込みによる感染や国内での集団発生の可能性は残っています。
風しん排除状態を維持するためにも、ワクチンによる予防が重要です。
昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性の方へ
この年代の男性は、子どもの頃に公的な風しん予防接種の対象外だったため、他の世代と比べて免疫を持っていない方が多いことが知られています。
札幌市では「風しん第5期定期接種」の特例措置を実施しています。
対象となる方
以下のすべてに該当する方
- 接種日時点で札幌市に住民登録がある
- 昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性
- 平成26年4月1日~令和7年3月31日に実施した抗体検査で、風しん抗体価が不十分と判定された
接種期間:令和7年4月1日~令和9年3月31日
費用:無料(札幌市の特例措置による)
接種ワクチン
- MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)
- 風しん単独ワクチン
※医療機関によって使用するワクチンが異なります。当院では麻しん風しん混合ワクチンを使用しております。
持参するもの
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 過去の風しん抗体検査結果(平成26年4月1日~令和7年3月31日に実施したもの)
百日咳ワクチン
接種費用
・トリビック(DTaP):8,800円(税込)
・Boostrix(成人用3種混合ワクチンTdap):15,400円(税込)
大人にも多い百日咳
百日せきは、長引く激しい咳を特徴とする感染症です。かつては子どもの病気と考えられていましたが、ワクチンによる免疫は時間とともに低下するため、近年は検査キットの普及もあり小学生から成人まで幅広い年代で患者が増加しています。
特に2024年以降は全国的に患者数が急増し、2025年の報告数は、全数把握が開始された2018年以降で最多となっています。
乳児にうつると命に関わることも
成人や学童期の子どもでは、長引く咳だけで済むこともありますが、ワクチンを接種前の乳児が感染すると重症化しやすく、肺炎や無呼吸発作を起こし、命に関わることがあります。
実際には、家族や周囲の大人から赤ちゃんへ感染するケースが少なくありません。
そのため、自分自身を守るだけでなく、赤ちゃんに感染させないためのワクチン接種が重要です。
妊婦さんにも接種が推奨されています
妊娠中に百日せきワクチンを接種すると、お母さんが作った抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。
その結果、生まれたばかりの赤ちゃんを、ワクチンを受けられる月齢になるまで百日せきから守ることが期待できます。
海外では妊婦への百日せきワクチン接種が広く推奨されており、日本でも接種を希望される方が増えています。
妊婦さんは妊娠27週から36週での接種が推奨されております。
当院で接種できるワクチン
当院では、百日せきを予防する三種混合ワクチン(DTaP)の接種を行っています。 また、海外へ留学される方や、海外でお孫さんが生まれて会いに行くような場合は輸入ワクチンの成人用3種混合ワクチンTdapの接種を行っております。
- 小児期の追加接種を希望する方
- 赤ちゃんと接する家族(父母・祖父母)
- 医療従事者や保育関係者
- 妊婦の方
インフルエンザワクチン
インフルエンザは高齢者にとって命に関わる感染症です
インフルエンザは毎年冬に流行する感染症で、高齢者や持病のある方では重症化しやすいことが知られています。
年齢とともに体力や免疫力が低下すると感染しやすくなり、肺炎や入院の原因となることがあります。特に高齢者では、インフルエンザをきっかけに体調を大きく崩し、その後の生活に影響を及ぼすことも少なくありません。
肺炎球菌による肺炎を合併するとさらに危険です
高齢者がインフルエンザに感染すると、肺炎球菌による肺炎を続けて発症することがあります。
この「インフルエンザと肺炎球菌肺炎の合併感染」は特に重症化しやすく、インフルエンザ単独の場合や肺炎球菌単独の場合と比べて、肺へのダメージが格段に大きくなります。
呼吸不全や敗血症を引き起こし、命に関わることもあるため、高齢者ではインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方による予防が重要です。
毎年の接種が必要です
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変化するため、ワクチンも毎年見直されています。
また、ワクチンによる免疫は徐々に低下するため、毎年秋(10~12月頃)の接種が推奨されています。
高用量インフルエンザワクチンが導入されます
2026年10月1日から、75歳以上の方を対象として、高用量インフルエンザワクチン「エルフエルダ」が定期接種として導入される予定です。
通常のインフルエンザワクチンよりも多くの抗原を含み、高齢者でより高い予防効果が期待されています。
また、60歳以上の方では任意接種として接種することも可能です。日本感染症学会は60歳以上はエルフエルダの接種を推奨しております。
実際にインフルエンザワクチンでインフルエンザの発症はどれくらい減ると思いますか? 50%の発症予防ってどういうことだと思いますか?
・よく間違われるのが、50%の発症予防効果って、100人接種して50人は発症しないっていうこと?と思われてしまいます。
例えば、
ワクチンを接種していない100人中、今シーズンインフルエンザを発症した人は40人
ワクチンを接種した100人中、今シーズンインフルエンザを発症した人は20人
発症した人は40人から20人に減ります。
これが50%の発症予防です。
子どもでは、インフルエンザワクチンの効果は50%程度と言われますが、高齢者は30%、80歳以上ではほとんど発症予防効果は認められないと言われています。 エルフエルダは通常のインフルエンザワクチンより24%発症予防効果が上がります。
定期接種
- 高容量インフルエンザワクチン「エルフエルダ」:75歳以上
- 通常のインフルエンザワクチン:
- 65歳以上の方
- 60~64歳で次の基礎疾患がある方
- 心臓機能障害
- 腎機能障害
- 呼吸機能障害
- HIV感染による免疫機能障害
任意接種
- 高容量インフルエンザワクチン「エルフエルダ」:60歳以上
- 通常のインフルエンザワクチン:上記以外で接種を希望される方
当院からのおすすめ
インフルエンザワクチンは、自分自身を守るだけでなく、家族や周囲の人への感染を減らす効果も期待できます。
特に高齢者や慢性疾患をお持ちの方には、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方の接種をおすすめしています。
ダニ媒介性脳炎(TBE)ワクチン
ワクチン
- ・使用するワクチン:タイコバック(16歳以上は成人用、1歳から15歳は小児用)
- ・接種料金:1回 15,400円(税込)
- ・接種スケジュール:初回接種後1〜3ヶ月で2回目、2回目接種後5〜12ヶ月で3回目接種、その後の初回追加接種は3年後、それ以降は60歳未満は5年毎に追加接種、60歳以上は3年毎に追加接種
- ・急速接種方法:初回接種後2週間で2回目、
- 2回目接種後5〜12ヶ月で3回目接種、その後の初回追加接種は3年後、それ以降は60歳未満は5年毎に追加接種、60歳以上は3年毎に追加接種
ダニ媒介性脳炎とは?
ダニ媒介性脳炎(Tick-Borne Encephalitis:TBE)は、ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニに咬まれることで感染する病気です。
感染しても症状が出ないこともありますが、発熱や頭痛などの症状に続いて、脳炎や髄膜炎を発症すると重い後遺症が残ったり、命にかかわることもある重篤な感染症です。
世界では現在でも毎年数千人が発症しており、ヨーロッパからロシア、中国北部など広い地域で流行しています。特にロシアなどでは致死率の高い極東型ウイルスが流行しています。
北海道でも身近な感染症になっています
日本では長い間まれな病気と考えられていましたが、現在は北海道で感染する病気として認識されています。
- 1993年:北海道で国内初の患者が確認され死亡
- 2016~2018年:北海道で患者が相次いで確認され、死亡例も報告
- 2024年:北海道内で新たに2名の患者を確認
これまで国内で確認された患者数は多くありませんが、死亡例も報告されている重篤な感染症です。
さらに、北海道内の調査では、札幌近郊を含む地域のヤマトマダニから、致死率の高い極東型ダニ媒介性脳炎ウイルスが検出されています。そのため、現在では北海道にお住まいの方にとっても注意が必要な感染症となっています。
感染リスクが高い方
感染のリスクが高いのは、森林や草むらなどマダニが多く生息する場所へ入る機会がある方です。
特に次のような方は注意が必要です。
- キャンプや登山を楽しむ方
- 釣りや山菜採りをされる方
- 林業・農業・酪農など森林で仕事をされる方
- 犬の散歩などで草むらに入る機会が多い方
- ヨーロッパ・ロシア・北欧など流行地域へ渡航される方
近年では、札幌市内の公園周辺からもウイルスを保有するマダニが確認されており、「遠くの山だけの病気」ではなくなっています。
マダニに咬まれないために
ダニ媒介性脳炎を予防するためには、マダニに咬まれないことが最も重要です。
- 草むらや森林では長袖・長ズボンを着用する
- 肌の露出をできるだけ避ける
- 虫よけ剤を使用する
- 帰宅後は全身や衣服にマダニが付いていないか確認する
- ペットを散歩させた後はマダニが付着していないか確認する
- 野生動物との接触を避ける
ワクチンで予防できます
ダニ媒介性脳炎は、ワクチンによる予防が可能な感染症です。
ヨーロッパではワクチン接種が広く行われており、接種率が高い国では患者数が大幅に減少しています。
以前はヨーロッパやロシアへの渡航者が主な接種対象でしたが、近年は北海道での患者発生やウイルスの確認が続いていることから、
- 北海道でアウトドア活動を楽しむ方
- 登山・キャンプ・釣り・山菜採りをされる方
- 林業・農業・酪農などに従事される方
を中心に、ワクチン接種を希望される方が増えています。
北海道出身の成人の多くは、実は接種していません
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを持つ蚊に刺されることで感染する病気です。発症はまれですが、一度発症すると脳炎を起こし、約20~30%が死亡し、多くの方に重い後遺症が残ることがある重大な感染症です。
日本では昭和51(1976)年から日本脳炎ワクチンが定期接種となりました。しかし、北海道では日本脳炎の発生がほとんどなかったことから、定期接種が開始されたのは平成28(2016)年4月1日でした。
そのため、現在の北海道出身の成人のほとんどは、日本脳炎ワクチンを接種していません。
ワクチン
ジェービック・エンセバック
・国内承認ワクチン
・接種年齢:生後6ヶ月以上
・接種スケジュール:初回接種後1週間〜4週間で2回目、2回目から半年以上あけて、1年後頃に追加接種
・接種料金:1回7,700円
日本では患者数が減ったのは「ワクチンのおかげ」
ワクチンが普及する以前、日本では毎年約5,000人もの患者が発生していました。しかし、定期接種の普及により現在では国内患者数は年間数名程度まで大きく減少しています。
これは日本脳炎ウイルスが日本からなくなったためではありません。
現在でも全国の豚では毎年、日本脳炎ウイルスへの感染(抗体陽性やウイルス感染)が確認されており、ウイルスは日本国内で今も循環しています。
患者数が少ないのは、ワクチン接種によって多くの人が守られているためと考えられています。
北海道の方が道外へ行く場合は注意が必要です
北海道には日本脳炎を媒介するコガタアカイエカがいないため、今までも日本脳炎の発生はありません。 ただ、本州・四国・九州・沖縄などでは日本脳炎ウイルスを持つ蚊が生息しています。
そのため、北海道出身でワクチン未接種の方が、蚊の活動が盛んな春から秋(おおむね4~10月)に道外へ旅行・出張・帰省する場合は、日本脳炎ワクチンの接種を検討することをおすすめします。
特に次のような方では接種をおすすめします。
- 夏から秋に本州・四国・九州・沖縄へ旅行する方
- 農村部や郊外など、蚊に刺される機会が多い場所へ行く方
- 長期滞在や屋外活動(キャンプ・農作業・スポーツなど)を予定している方
- 海外の日本脳炎流行地域へ渡航する方
北海道出身の成人は「自分は接種済み」と思われている方が少なくありませんが、実際には未接種であることがほとんどです。旅行や出張の前に、一度接種歴を確認することをおすすめします。
第二次大戦後、沖縄に来た米軍兵は日本脳炎が相次ぎ全員にワクチンを接種
第二次大戦後、米軍が沖縄に入ってきてから脳炎を発症する米軍兵が相次ぎ、急遽調査が行われました。
当時、脳炎の症状が認められた38人中、検査で日本脳炎と診断されたのは11名でしたが、当時の検査の問題もあり、多くは日本脳炎だったと考えられています。
その後米軍は6〜7万人に緊急ワクチン接種を行いました。
ワクチンを接種していなければ感染するリスクは現在も変わっていません。
北海道以外の日本は「日本脳炎の危険な地域」です。
オーストラリアでこの数年、日本脳炎の発生地域が拡大し、50名以上の発生、8人が亡くなっていますが、北海道も温暖化などによりいつ日本脳炎が発生してもおかしくない状況です。
診療時間
学会、講義などにより休診とさせていただく場合がありますので、診療カレンダー・お電話にてご確認いただくことをお勧めします。(日祝、月曜は休診となります)
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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